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Patch × TRUMP series 10th Anniversary『SPECTER』をみたよ

2019年4月20日夜@本多劇場

 

劇団Patchの「SPECTER」再演を観てきました!

初演時は円盤待機組だったのですが、それ故に強く思ったことを……

 

やっぱり舞台は生ものだわ

 

すごく当たり前のことなんですけど、今回はそれを強く感じたなあ。

開演前は、なんだかんだいって再演だしストーリー分かってるし泣くことはないだろうな~なんて思ってたんですけど、まあ普通に安易な考えでバチボコに泣いてしまった。

会場からダイレクトに伝わる空気感・緊張感・凄惨さがものすごい。円盤ではマイクの音量がとても小劇団らしい作りで伝わり辛い部分が一部あったんですが、生だとばっちり台詞が聞き取れるし殺陣もすごいし息を飲んで観てしまった。

そもそもキャリアを数年分積み重ねた役者が演じるんだし、パワーアップしてて当たり前なんですけど、生って本当に違う。完全に圧に飲み込まれました。

 

SPECTERの面白さを私は今まで理解してなかったんだなあ。

 

 

◆ストーリーについて

初演時から現在までNU版TRUMP・グランギニョルマリーゴールドが出ているので、上記それぞれの設定に合わせて若干の変更点はありました。

(例)

・萬里の「どうせなら歌麿の方が良かった」に対する石舟の台詞に「春林師匠」のワードが追加。師弟の関係がよく見えた

・サトクリフの弟の能力について→「オズは5~10分程度の未来しか見えない」

全体的に物語の根底からひっくり変えるような規模の変更はなく、あくまで「若干」って感じ。

あ、でもクラナッハのお花に関して一部の人の心に刺さる変更がありました。

(卒業メンバーが演じたのと同じ名前のお花が研究対象から外れていた……)

 

◆キャストについて(5/2更新)

これ、キャストにとって良いこととは限らないのかもしれないんだけど、再演の方がストンとはまった人たちが多かった。※個人の感想です

うーん、言い方が悪いな。。なんていえば良いんだろう。初演も素晴らしかったんだけど、再演のキャストはその人の持つ能力や長所が発揮しやすかったのかなって。

結果的にしんどいんですけど。

 

<松井勇歩さん(臥萬里 役)>

顔がもう萬里って感じじゃん(????????????)

初演でヒューゴをやってらした時も大変イカれてておいしかったんだけど、再演萬里は初演萬里よりもほんの気持ち精神年齢が若くて「粗雑で不器用だけど優しく強い男」っていうThe★主人公タイプになってて、まーーーーーーかっこよかった!

ご本人が目力強めだからどっちの役もマッチするけど、個人的には萬里の方が魅せられました。ヒューゴをもう一度演じたかったっていう気持ちはもう本当に本当に理解できる、けどなるべくして萬里になったと思いました。

 

こういう男に昔大切な妻(恋人かも)がいて、不器用ながらも愛を育んでたのかと思うとたまらない気持ちになってしまう。そういう要素すごく好き。守れなかった悲しみと罪と恨みを抱えながらも、しっかりと両足で大地に立つ男。

最高でした。キャスト発表時も「あーこれははまり役だわ」って思ってたけど期待以上。

 

あと、かつて演じたヒューゴに殺される光景は想像してたより強烈だった。

 

<竹下健人さん(石舟 役)>

声がもう石舟って感じじゃん(????????????)

滑舌と発声が素晴らしい。抜群に聞き取りやすい。

初演のクラナッハを演じられた時に感じた違和感……いや、違和感ってほどじゃないんですけど、なんかこう不気味に思ってた理由が今回分かった。滑舌と発声が良いんだよ。

クラナッハは悪い意味で研究者タイプで、人とのコミュニケーションがほとんどとれないにもかかわらず、他の方よりもものすごいハッキリ台詞が聞き取れたから、かえって気持ち悪さがあったんだな。(悪い意味ではない)

 

そんな竹下さんが今回石舟ですよ。ネブラ村襲撃事件記録を読み上げるシーンで、その長所をいかんなく発揮してた!ストーリーテラー的な部分も何の問題もなく勤めあげててハマってた。

「彼らを……『SPECTER』と呼んだ」の言い方がはちゃめちゃにかっこいいし、キャスパレがはじまって照明が真っ赤になるところなんか最高に気持ちよくないですか?ママ―!あれ私もやりたい!!ってはしゃぎたくなりません????「『SPECTER』と呼んだ」ごっこやりたい(どんな?)

 

キャラクターについても初演とはまた違ったアプローチで、でもちゃんと落とし込みができているから演技に説得力がある。初演のハンター組はもっと変態だったけど、おバカな萬里をおちょくって遊んでて、春林・歌麿コンビの関係性とリフレインした。

だからこそ、萬里の死体と対面したときの「萬里……」に、普段は朗らかでどこか掴みどころのない彼が抱いた強い動揺と悲しみが伝わって胸が締め付けられた。

そして、再演だとノームから「石舟先生(師匠)」と呼ばれんですけど、その時にノームに対する愛着がかすかに感じるんですよね。それ故に、石舟の行く末を想像してしまってまた悲しい気持ちになりました。

いつどのタイミングで石舟が原初信仰者となるのかずっと気になってたんですけど、もしかしたら自分自身ではなくノームの命にTRUMPの慈悲を求めたのかもしれないですね……。

 

あと、槍の使い方がとてもかっこよかった!長物ってどうしても動きが鈍く見えがちなはずなのに、しっかり静と動のメリハリが見えて素晴らしかった。

 

井上卓也さん(ヒューゴ 役)>

まずビジュアルが優勝。

いやいやいやいや、君、前回かわいいノームでしたやん……。なんでそんなことになってるの。

控えめに言って最高。深刻な繭期で表面をガチガチに固めてる。

真っ白な衣装・髪・お肌に黒のメイク。そこに王冠のっけててV系をちょっとやりすぎなぐらいに拗らせてしまった王子様な感じ。最高。好き。

ニコ生の配信でビジュアルが出てきたとき、あまりの最高さに家の中でスタオベした。

 

キャス変でしんどくなるキャラトップ3には入る。初演で恩人を殺された子どもが再演でその恩人を殺すんだよ(しかも恩人は仇と同じ顔)。グレまくってんですけどこのノーム。

ライネスのシーンが一番混乱した。「私は今何を観させられてるんだ」って思った。ヒューゴ→萬里に関しては業が巡るって感じしたけど、ノーム→ヒューゴは善から悪になるだけに苦しい。本当勘弁してほしいライネス。

 

「嬲り殺してやる」の声にゾクゾクしたの私だけじゃないはず。ここの演出最高だと思った。目はやばいし声は低く言い放った直後にバツンッて暗転するのがもう天才。オタクはこういうのに弱いですよ末満おじさん。

 

<納谷健さん(サトクリフ 役)>

キャスト発表で「サトクリフ:納谷健」の文字を見た瞬間、天に向かってガッツポーズした。

いや、大勝利ですやん……。絶対にみたい組み合わせじゃん……。正直な話、納谷君がサトクリフやるって分かってから「生で観たい」って思った。

アクションが他の人より抜きん出てる納谷君なので、絶対繭期の少年は似合う。そんでもって「触れたものの死」が見える特性を持ち、主人公に死の予言を与えるサトクリフは、納谷君の新境地を確信したし絶対できるとわかってた。

 

実際見たら、まー素晴らし……えっ待って何その衣装?!ふんわりとした衣装の袖が裂けてるタイプで二の腕があらわになっている……。大変だ……。なんていうツボを押してくるんだ衣装さん。

 

 いやこれは大変な事件ですよ。

見える……見えるぞ!その衣装にまんまと翻弄されるオタク達の姿が!!!

いや、あまりにも衝撃的すぎて意識飛びそうになった。。

 

演技ももちろん期待通りでした。死を予知するとき、背骨の概念が分からなくなるほど後ろに反るし、声もどこか目の前の死に興奮して恍惚とした感じになるところとか、心の中の大向うが叫んだ。

 

ありがとう、サトクリフを演じてくれて……。納谷君のサトクリフを見られたことで、ある意味人より得した気分にすらなれました。

 

<藤戸佑飛さん(バルトロメ 役)>

好き。

初演バルトロメもめっちゃすきなんだけど、今回ビジュアルがより女の子っぽくて輪郭もぷにぷにしてて可愛いです(感覚がマヒしてる)

ヒューゴとの追いかけっこ大好きなんですけど、今回もあってよかったーーーー。あれ、あったよね?幻覚じゃないよね?不安になってきた。無駄に長くて、割と本気で逃げてる風に見えるやつ。絶妙なんですよね。好き。

 

あと、クラナッハとのシーンも印象的。バルトロメはそもそものキャラクターが強いから初演と重なりがちだけど、この部分が初演との違いが少し出てる気がした。もっとずっとサラッと刺すし、でも「自分たちではどうしようもできない繭期の精神状況」に対する巻き込まれた人への申し訳なさを感じた。

繭期の衝動に対して諦めや開き直りが強かった初演に対し、藤戸ロメは若いヴァンプにとって繭期は決して楽しいものではないんだと叫んでいるようで切なかったです。

 

観客の同情を誘う誘わないに正解なんてないけれど、今回のバルトロメも安定して面白く滑稽に映りました。素敵なバルトロメをありがとう。

 

<尾形大悟さん(グレコ 役)>
ビジュアルの変化が一番すごい。


初演の時はビジュアル的な意味もキャラ的な意味も含めて、いまいち印象がなかったんですけど、今回キャラ立ちがハッキリしたことで印象に残りました。
フランケンシュタインみたいな感じ(言い方)

 

大人の5歳児みたいで、繭期4人の中でも埋もれることなくバランスが取れてました。
演技面については可もなく不可もなく普通っていう印象。目を見張るような光る演技はないですが、あのヤバめなキャラクターを「普通」に演じられるのはバイプレイヤーとしての仕事をきっちりこなしていたからだと思います。

 

星璃さん(カルロ 役)>
本当に申し訳ない……あなたがしょーりさんでしたか

 

ご本人にもファンの方にも申し訳ない発言。。「星璃」っていう文字で認識していて、もうずっと読み方把握してなかった。でも覚えた。あなたが「しょーり
」なのね!(メイちゃん風)
近藤 頌利くんがしょうり君だとずっと思ってて、ここで同じ名前の人が2人もいるとは思わなんだ。

 

脱線したけど、カルロ役だけでなく殺陣も小道具もOP振り付け・構成にも携わってるスーパーハイスペック君で私は震えた。家具って小道具なのかな?ガチで「僕の手作りの家具」かもしれない。
役者がスタッフを兼任するの、すごく小劇団っぽい!っていう感動もあるけど、どれもクオリティがすばらしくてちょっと意味わかんなかった。妥協がねえな。

 

カルロは今作で一番の「愛」の人。ハリエットへの恋もあるけど、小さな子供が抱く恋のような淡くささやかな感情だと思った。そして、ローザへもシャドへも同じぐらい愛を持って接する。萬里達を村に招いたことでなじられても、家をめちゃくちゃにされても「本当は彼らは優しい奴なんだ」と本気で言えてしまうのがある意味惨い。シャドに殺される時、あんな風に微笑んであんな風に言ってしまったら、普通の精神してたら耐えられない。
シャドとカルロのシーンは屈指の名シーンだと思う。
それは、二人の役者が本気でそれぞれの役に入り込んで、台詞を本気で口にしたからなんじゃないかな。

 

でも「やあ、ハリエット」の台詞を「やあ、ローザ」ってサラっと間違えたのは笑った。何事もなかったかのように言い直してたから、そういう台詞か?って思ったけど絶対間違えたよね笑。
あの時、一瞬ハリエットから圧を感じた。

 

<三好大貴さん(シャド 役)>

もう本当やだ!!いっちばん無理!!!しんどい!!!!

 

勘弁してくれよ……もう、いや……(語彙の消失)

劇団Patchのことを語るにはあまりに何も知らなさすぎるから、偉そうなことなんも言えないんだけど、三好大貴っていう俳優としての姿勢やTRUMPシリーズへの敬意を痛いほど感じました。それほどシャドがすごかった。

 

想像することしかできないけれど、個人的に三好さんは石舟というキャラクターに誰よりも愛着をもっていて再演でももう一度演じたかったんじゃないかなって思ってた。

その上で今回シャドを演じるっていったいどういう心持なんだろうって、一番気になってた存在でもあってドキドキした。色々な意味で。誤解を恐れずにいうなら、初演のシャドっておいしいポジジョンにいるのにどうにもモブっぽさから抜け切れないって感じてた役どころ。今回のキャスティングは劇団内でおおよそを決めたというけど、石舟をふっきれるのかななんて失礼なことまで考えてました。

 

それがどうよ、シャドでボッコボコに泣かされたわ!!!!

SPECTERで個人的に一番しんどいのがローザの末路なんですけど、そこに重点を置くだけじゃない。しんどいシーンで観客の感情をピークへもっていかせるための布石がすごかった。

 

シャドがローザをどれだけ愛して、どれだけの献身を重ねて、どれだけ心を殺してローザ以外の者たちを陥れてきたのか。シャドの業がどれだけ深いものなのかを、登場からラストにかけてずっっっと訴えかけてきた。

初演でもシャドとローザの末路はしんどかったけど、再演は末路までの「過程」が素晴らしかったと思う。

キャラクターの良し悪しは役者のさじ加減でどうにでもなるって感じてしまった……。ここまでいってなんだけど、初演シャドが駄目だとかそういう話ではないです。でも三好シャドが本当に本当に素晴らしかった。

あと、再演だとカルロやトリステンとの友情も比較的濃く見えたので、二人を手にかけたシーンのドラマティックさも割増でした。

 

本当一番しんどい。。こちらの感情がまとまりきらない。。