浅く広く

観劇の感想とか趣味のこととか

(日本初演)マタ・ハリが最高だったって話をしたい。

しんどい。

 

結論からいうと↑こんな感じ。

はーありがとうマタ・ハリ。私のマイナス値となっている芸術的感性が2ぐらい上がった気がする。面白かったです。

 

2/3の東京公演初日に観劇しました。

(キャスト敬称略)

マタ・ハリ→柚希礼音

ラドゥー→加藤和樹

アルマン→東啓介

ピエール→西川大貴

f:id:yoshinas:20180208182436j:plain





※この先ネタバレしかないです

 

~めちゃくちゃ雑だけどネタバレはんぱないあらすじ~

舞台は、第一次世界大戦が開戦してから3年が経過した(年数違うかも)フランス。戦況は厳しく、毎日多くの命が奪われていた。

 

そんな混乱の世に、国境を越えて人々を魅了する女ダンサーがいた。

 

名前は、マタ・ハリ。ジャワの言葉で「太陽」を意味する名を持つ彼女は、フランスを拠点としながらも敵国であるドイツにすら自由に赴き踊ることができる。常に世界各国から公演のオファーを受けていた。

そんな彼女に、一人の男が接触する。

名前はラドゥー。フランス軍諜報部の大佐だ。彼はマタに敵国のお偉方に接触し、情報を持ち帰るよう提案する。もちろん、マタは抵抗する。彼女がヨーロッパを行き来できるのは、その実力だけではなく「中立」的立場にあるからだ。たとえ自身の名を有名にしたフランスに敬意を持っていても、それを崩すことはない。彼女は誇りをもって、ラドゥーを拒絶した。

しかし、そんなラドゥーも無策でマタに接触したわけではない。彼はマタの秘密を握っていた。マタが誰にも告げなかった、二度と触れたくない過去。彼女の「恐れ」をチラつかせ、ラドゥーは劇場を去っていく。

 

ある日、マタは公演終わりに3人の酔っ払いに絡まれる。毅然と対応するものの、理性の飛んだ男に抵抗できるほどの力はない。誰も助けてくれずに襲われそうになったその時、一人の若者が乱入してきた。

若者はマタを助けようと酔っ払いと乱闘するが、男3人相手に無傷とはいかなかった。酔っ払いはマタの機転もあり去っていったが、若者は手酷く暴行される。それでもマタは、自身を助けてくれた感謝と無鉄砲な行動に対する苦笑をもらす。

若者はフランス軍パイロットで、アルマンと名乗った。マタの公演をみて、サインが欲しくて劇場にいたところ彼女が襲われているところに遭遇したという。

幼い頃から暴力が身近にあるような環境にあり、こんな怪我には慣れている。それよりも、暴力を見て見ぬフリができなかった。そう告げるアルマンに、マタは彼の優しさを見出した。

マタは怪我を負ったアルマンを家に連れ、介抱する。二人は少しずつ心を開き、惹かれ合うのだった。

 

しかし…アルマンのとある「秘密」を、まだこの時の彼女は知らない。

 

~感想~

文才がないので、前半のあらすじだけでめっちゃ長い。まあいいや。

 

日本初演の舞台ってだけでちょっとギャンブルっぽい気持ちになるのは私だけですかね。面白いのかな、大丈夫かな、なんて心配しながらも「なんとなく面白いだろうなという確信」をもって劇場に向かったんですが最高でした。

 

いやー、日本初演でここまで話の流れが理解しやすくて、かつ胸にくる舞台だと思いませんでした。

良質な舞台っていう感じ。ちょっと敷居の高く感じるグランドミュージカルの中でも、比較的誰でも馴染みやすく作られた舞台だなって思いました。

これは若い人に人気のある加藤和樹東啓介のファンがくることを見込んでたからかな?

 

若いファンも大勢劇場にきて、存分にかっこいい二人がみられる。わーカッコいいーなんて油断してたら、宝塚の元男役トップスターの柚希礼音さんが艶やかに美しく舞い踊る。これはずるい。マタ・ハリがめっちゃくちゃに美しいんですよ!

体型がいやらしくない、程よく引き締まった筋肉がマタの孤高さをよく表していたように思います。誰の手にも入らない美しさがそこにあった。人々がマタ・ハリに魅入られるという説得力が、シルエットからも感じることができました。マジですごい。

私は宝塚にまだ一度も触れていないんですけど、宝塚の男役トップスターの肩書は伊達じゃないってことがよく分かりました…。女性が柚希さん好きになる理由がわかる。美しさの中にかっこよさが芯にある。

もしかしたらなんですけど、この方ってダンスか歌かでいったら恐らくダンスが得意なのかもしれない。

歌はもちろん高水準なんですけど、この上手さは「努力」を感じた。元々備え持つセンスよりも努力に比重がある上手さって感じ。ちょっとうまく伝えられないけど。

つまるところ「わあ~上手い!」ってなるわけじゃないんですけど、ぶっちゃけ泣いた。なんだこれ、上手さじゃなくて、多分マタの気迫で涙腺やられた。孤独とか悲しみとかをたくさん背負って、それでも「人生は素晴らしい」と笑顔で歌ったその気持ちがめちゃくちゃ心に響きました。すごいよ、マジで。(語彙力)

 

この舞台でわかりやすく歌が上手い人って、脇を固めてる福井晶一さんや和音美桜さんなんですよ。うっとりするほど上手い。

でもメインを固める人間の演技から訴えてくる感情の熱量がすごい。足りない部分があったとしてもそんなの感じなくなるぐらい、揺さぶられました。

 

またあれな、加藤和樹の演劇的頭の良さすごいな?私が見たのはラドゥー回だったんですけどゾクゾクする。ツイッターで「アルマンがはまりすぎててラドゥーの想像がつかない」的な感想をみかけるんですけどめちゃくちゃ良いです。セクシーかつ悪い。

アルマンに超絶最前線の死地へ偵察部隊として飛べって命令したときに「(腹いせのように)自殺も同然の場所へ送り込むのか!」となじられるんですがその時に「気を付けて飛べばいい」と平然と返すんですよ。超ゾクゾクした。

偵察機って抜群に生存率が低いんですよね。低空でないと偵察できないから、結果的に捕捉・撃墜されやすい。アルマン自身も軍人ってことはそれ相応の覚悟もあるだろうけれど、よりによって自身の直属の部下として1年仕えてきた彼にこんな形でアッサリと捨てる(様に捉えられかねない)命令を下すラドゥー。一筋縄ではいかない難しく、でも華やかな役だと思いました。

しかも加藤和樹、めちゃくちゃセクシーだしなんか上手い(偏差値2)。すごく優秀な人材だなって思います。私そんなに詳しくないから、ファンの方のほうがずっと彼の魅力がわかると思うけど「素敵」が服着て歩いてるって感じがしました。

ラドゥー、すごく好きなキャラクターです。

この時期のフランスはとても戦況が厳しくて、勝機があるものはなんにでも縋りたくなる。戦況が厳しいってことは人が大勢死ぬ。大勢死ぬってことは士気も国民感情も下り坂な一方。戦争は終わらせたいけどそれは「勝つ」ことが大前提。

そんな中、大佐という地位をもつラドゥーは誰よりもその責任を背負っているわけです。首相からはプレッシャーをかけられるし、通信機からは毎日のように部下の死が伝えられる。

だから少しでも有利な情報を得ようとマタ・ハリを引き抜こうとするんですけど、その魅力に自身も抗えなかった。でもその立場からストレートに想いを伝えることができなくて、どんどん相手を追い込んでいく。ひゃー雁字搦め。

ちょっとまとまらないからぶった切るけど、キャラクターとしては完全な憎まれ役だけどおいしい要素満載でした。

 

すごい、長くなった気がする。。違う、私はアルマンの感想が書きたくてパソコン立ち上げたの…。本当、もうすでにまとまりないのに大丈夫かこれ?

 

~アルマンの感想~

ああ、本当にいい役貰ったね……。

もうこれに尽きる。もうね、胸いっぱいだった。東啓介、楽譜読めないんだよね。そう、楽譜読めないんですよ!(コードはわかるみたいだけど)

私は全然楽譜が読めるから「楽譜が読めない」っていう感覚がもう昔過ぎて思い出せないけれど、本格的に音楽をやるためには楽譜を読むことがどれだけ大切でどれだけ難しいかってことはめちゃくちゃ分かる。

楽譜にあるのは音符だけではなくて、強弱記号とかリズムの指定とか本来とても情報量が多い。つまり、楽譜に作者の解釈が書いてあるんですよね。解釈を理解するためにはそれが読めないと話にならなくて、耳で聞いて覚えるだけでは限界がある。

それを「楽譜を読んで」「声楽的発声を学んで」「役として落とし込む」。どれだけ頑張ったんだろうって舞台を観てて思いました。

いやね、ある程度大人になってからやる基礎学習って、めちゃくちゃ退屈で難しいと思うんですよ。コンコーネやってるんだっけ?違うっけ。偉いなあ。

 

頑張るだけなら誰だってできるけど、それを確かな形にして本番を迎えた姿にまず感動しました。発声がとても良くなってた。

しかもまだ発展途上だからもあるけど、ガチガチの声楽的発声じゃなくて耳になじみやすい歌い方。それがアルマンとよくマッチしてた。若くて、危うい。でも芯も感じる良い歌でした。

解釈は、すごくまっすぐな気がする。諜報員としての深みとか複雑さを表現するのは難しいだろうけど、それは今の年齢を考えたら正解だと思う。そこを観たいなら加藤版アルマンなんだろうな(タイミングが合わなくて観れないのが残念)

ラドゥーに従ってきたけど、徐々に任務ではなく本当にマタを恋人として慈しんでしまう。軍人であるにも関わらず、死地への任務を受けて生への執着から思わず激昂する。シンプルで伝わりやすい演技をするには最高の年齢とキャラクターだと思いました。あれ、何様だ?????

 

「二人の男」というナンバーがあるんですけど、大阪公演観劇勢が絶賛してた理由がよく分かった。。正直、稽古映像の比じゃないぐらい熱量感じる。殴り合いの歌だと思う。

ラドゥーにマタへの愛情を指摘されることで逆にラドゥーのマタへの想いを察する。マタは自身を愛してくれているのに、ラドゥーの命令を拒否することは立場上できない。この悔しさと憎しみ、マタへの想いがすごく伝わって興奮しました。

 

「普通の人生」は、うん、これ難しいね。。って思った。よくわかんないけど、これを歌いこなすにはそれこそ声楽的スキルが必要だと思う。高い音をもう少し苦しくなく出せたら最高だけど、ぶっちゃけこの場面が苦しい気持ちを爆発させるところだから正解なのかな。たぶんそういう意図があって、あのキーで作られてるのかも。

でもこれもいい歌です。恋人と分かり合えずに別れてしまい傷ついたアルマンが、かつての甘い記憶を思い起こし自分の気持ちを振り返る。序盤からクライマックスまでのメロディーがすごく美しいと思いました。

 

もう長すぎて終着点見当たらないのでこれくらいにしますが、本当の本当に質の良い舞台でした。まだ観るので、さらなるブラッシュアップが楽しみ。

あ、西川大貴さんのピエールが最高だったっていうの忘れてた!彼はすごい、出番が少ないのに演技が良すぎて秒で泣いた

戦争を目の当たりにして国のために貢献したいのに、それでも死への恐れが身をすくむ。そんな苦しい気持ちがビシビシ伝わってきて辛かった。

既に西川さんは千穐楽を迎えているので、今は新生ピエールか。新ピエールも楽しみにしてます。

 

それでは、最後に言いたいことを一つ。

「From Way Up There」は日本版でも使ってほしかったです!!!!

アルマンのあの歌大好きなんだよお!!!!

理不尽な環境で生きる彼が雲の向こう側にこそ己の希望を見出す最高に良い歌なので、日本語で聴きたかった!!!!!場転の音楽になってた!!!!くそおおおおおお!!!!